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リーダーという役割には罠がある

リーダーになると必ずと言っていいほど陥ってしまう罠があります。

この罠に陥ってしまうと、そのリーダーに率いられるメンバーからは、

・創造性

・意欲

・やりがい

が失われてしまいます。

メンバーが自主的に動かなくなり、中には反発が生まれることもあるでしょう。

つまり、チームが機能しなくなるのです。

しかし、リーダーがこの罠について知っていれば予防できるのでチームの機能不全を起こさずに済みます。

この罠は「責任感の罠」と言われます。

斉藤徹さんの著書『だから僕たちは、組織を変えていける やる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた』より紹介いたします。

1.「責任感の罠」エドワード・デシの実験

「責任感の罠」に関する実験があります。
エドワード・デシが教師を対象に行った「成果へのプレッシャーが教師の行動をどう変えるか?」という実験です。
教師を二つに分け
・Aグループ「教師として、生徒に高い水準の成績を修めさせることが責任ですからね!」
・Bグループ「何も言わない」
グループごとに与えるプレッシャーを変えました。
すると、よりプレッシャーを与えたAグループの教師は
①話す時間が2倍
②命令的な話(すべき、しなくちゃ)が3倍
③管理的な話も3倍
と管理的になったそうです。
さらに、その生徒たちは…
①内発的動機づけ低下
②創造性低下
③概念的理解の低下
というように狙ったものからは反対の結果が得られました。
つまり「成果を求められるほど、成果を落としてしまう」という「責任感の罠」が認められました。

2.意思決定者の「責任感の罠」

組織が「責任感の罠」に陥っていくと、次のようなスパイラルにはまっていきます。
(みなさんの組織に当てはめて考えてみてください)
①売上などの数値目標が決まる
②それに応じて各部門ごとにも目標と責任者(リーダー)が決められる
③リーダーがそれぞれのメンバーに目標数値を分配する
④進捗把握のために定例会議が設定される
⑤進捗管理のために日報や週報が義務化される(さらにリーダーは上層部への報告が課される)
⑥業績が悪い部門のテコ入れのために、報告や会議の頻度が増える
⑦部門全体の業績テコ入れのために、さまざまな賞罰やルールが導入される
⑧現場が数字づくりに走り、無理な売上が増え、クレームやトラブルが発生する
⑨トラブル対応のために、コンプライアンスが強化され、専任部門が新設される
⑩コンプライアンス会議が定例化し、問題の発見や報告が義務となる
⑪問題が発覚すると、それに関連する部門や業務の報告や会議の頻度が増えていく
意思決定者が「責任感の罠」に陥っていると、コントロール欲求が高まります。
それによって、報告や会議の頻度が増え、現場がさらに疲弊していきます。
現場では、多くの規律が求められ、自由な裁量が減りっていきます。
それによって、メンバーの自主性・自律性が失われ、受け身の姿勢を生み出すという悪循環が発生してしまいます。
実は、現在の日本中の多くの組織が「責任感の罠」に陥っています。
数年前に言われた「忖度」が「責任感の罠」に似たような性質のものでしょう。

3.「管理組織」からの脱却

リーダーが「責任感の罠」にはまると、組織は管理的になっていきます。
そのような「管理組織」から脱却することが、組織の成果を上げるためには欠かせません。
前提条件として、「管理組織」や「責任感の罠」について知っている、またはチームがうまくいっていないという現状を把握できているところから変革は始まります。
では、そのような前提条件をクリアした上で、達成したい三条件をみていきましょう。
①メンバー一人ひとりを信頼し、任せる
管理とは真逆の態度です。
そのためには、メンバー一人ひとりのことを知ることが不可欠です。
よく知らない人間を信頼なんてできないからです。
好きなことや苦手なことにはじまり、仕事への考え方やコミュニケーションの傾向などを掴むことが重要です。
これには、きちんとした1on1の機会を持つことが有効です。
(リーダーには1on1のスキルが欠かせません)
②対話の機会を多く持つ(心理的安全性を確保する)
チーム内に安心できる雰囲気はあるでしょうか?
いつも管理されているとギスギスしたよそよそしい雰囲気が生まれてきます。
一番わかりやすいのは、会議のときの発言時間です。
リーダーや一部の人ばかり話しているようだと要注意です。
基本は、全員が同じくらいの発言時間を持っているということが大切です。
③ビジョンを共有する、または共にビジョンを創る
「仕事の意味:何のためにその仕事に取り組むのか?」
ワクワクするようなビジョンがみんなをやる気にさせます。
目標に向かう一体感を作り出します。
全員がワクワクできるような夢を描きましょう!
この三条件で「管理組織」から脱却し、最高のチームを作っていくことができます。
ぜひ、そのようなお手伝いができれば幸いです。